インバウンド、地方創生・再生、観光立国、シェアリングエコノミー、こんなキーワードが飛び交う日々を送る中で富山発信のあのプロジェクトにどうしても魅力を感じてしまう。

BED AND CRAFT」(ベッドアンドクラフト)は富山県南砺市井波地域で2016年9月から本格的に始動した。私の上海時代の友人であり尊敬する建築家でもあるTomo Yamakawa Designの山川智嗣(やまかわともつぐ)さんらを中心とする任意団体「コラレ アルチザン ジャパン」が立ち上げた本プロジェクトは空き家を古民家ゲストハウスに改修し、宿泊客に木製スプーンなどの体験を提供している。

私もプロジェクト始動前にご招待頂き、富山の地を訪れた。山川夫妻とは上海時代からのお付き合いで、私が起業する際の会社名や会社ロゴの設計もお手伝いして頂き、その人柄やセンスの良さに魅力を感じていた。そんなお二人を中心に南砺市井波地域のリソースを活かした町おこしプロジェクトの概要をお聞きしたときは正直ワクワクしたことを今でも覚えている。

「空き家をリノベーションして外国人観光客に宿泊してもらおう」
「観光に来てもらった外国人に日本の伝統的な体験をしてもらう」
「外国人観光客に日本でしか味わえない食事を食べてもらおう」

確かにどれも素晴らしいと思うが、何だかどこか“聞き飽きた”という感覚がしてしまうのは私だけだろうか。外国人観光客の目的は多種多様ではあるが、彼らははっきりとした「旅の目的」をもって日本に来ている。観光、買い物、体験、食事などが「旅の目的」ではあるが、しかし忘れてはいけないことがもう一つ、「目的」という言葉より『期待』という言葉の方が適しているかもしれない。その『期待』とは【思い出作り】と【交流の機会】だ。

特に距離的に、経済的にすぐに来れない人ほど『期待』をもって日本に旅行に来ているのではないだろうか。自分に置き換えてみたらわかりやすい。沖縄、北海道、韓国、北京、台湾などは飛行機に数時間乗っていれば着いてしまう。しかもLCCが増えたおかげで気軽に旅行できる。二泊三日でもそこそこ楽しめるだろう。ではハワイ、オーストラリア、アメリカ、フランスはどうだろうか。時間的にも経済的にも同じ感覚ではいけない。やっともらえた長期休暇、半年一年貯めたお金を使うのだからそれは特別な旅行、特別な思い出、特別な体験を求めるのが普通ではないだろうか。

前置きが長くなってしまったが、BED AND CRAFTは「空き家を改修した古民家に泊まるだけでなく、他では体験できないモノづくりを地域の職人と交流しながら体験できる」まさに【思い出作り】と【交流の機会】そんな“期待”が感じられるプロジェクトである。

実際にゲストとして宿泊に来ている外国人観光客の中には日本語をほとんど理解できない人もいるそうで、もちろんホストとして迎える側の彫刻家などの職人さんたちも特に英語が堪能なわけではない。しかし身振り手振り、見様見真似で交流を図り、一つの作品を仕上げていく。お腹が減って地元の居酒屋や蕎麦屋に行けばそこの大将や女将が笑顔で迎えてくれ、ここでも身振り手振りで注文する。ノリの良い大将なら片言の英語で話しかけてくるかもしれない、気の利く優しい女将ならちょこっとサービスしてくれるかもしれない。田舎ならではのゆっくりとした時間が流れ、帰りにはまた笑顔で見送ってくれる。

外国人観光客の集客と考えるとどこか少しわかりにくかったり難しく感じるかもしれない。もちろん都会と田舎で施策は多少なりとも変わるかもしれないが、【思い出作り】と【交流の機会】そんな“期待”が感じられる仕掛けや仕組みを考えていくことが外国人観光客の集客やゴールデンルートから外れた地方への誘致になるのではないだろうか。