最近、商業施設やコスメ店舗様から中国人観光客のインバウンド集客についてご相談を頂いています。
中国では先日、長期休暇である国慶節が終わったばかりですが、またすぐに春節が訪れます。
春節時期の訪日中国人観光客は毎年増加傾向にあり、来年2019年の春節も多くの中国人観光客が日本を訪れると期待されています。
2019年の春節はいつからいつまで?
2019年旧正月(春節,チャイニーズニューイヤー)は2月5日(火)です。
2/4(月) 大晦日にあたる
2/5(火) 旧正月(春節)
2/6(水) 休み
2/7(木) 休み
2/8(金) 休み
2/9(土) 休み
2/10(日) 休み
2/11(月) このあたりから稼働
2/12(火) このあたりから稼働
この時期は「春節」という、旧暦上のお正月です。
中国や台湾、香港、韓国などで祝う風習があり、多くの人が連休に入ります。
春節を祝う地域は、アジアを中心にさまざまですが、特に中国人がアクティブに旅行します。
実際に、2018年2月の訪日中国人の数は約71万6千人を記録しました。消費額も2018年1月から3月まで、中国人だけで約4,391億円を記録するほど、インバウンド産業に影響を与えているのです。
春節を祝うのはアジアにある10の地域や国であり、主に以下の10地域で祝います。
・中国
・台湾
・韓国
・ベトナム
・シンガポール
・マレーシア
・インドネシア
・ブルネイ
・モンゴル
・北朝鮮
国によって連休の日数や風習は異なるものの、連休になり帰省や旅行をすることは、どの地域も同じです。
ただし、ベトナムでは「テト」、韓国では「ソルラル」と、地域によって呼び名が違うこともあります。
繰り返しになりますが、今回は商業施設における中国春節のインバウンド対策ということもありますので、注意点を少し申し上げます。
春節は約1週間の休みではありますが、中国インバウンドを狙う上ではこの1週間の期間だけがインバウンド対象期間(販売強化期間)ではありません。
中国人にとっては年に数回の大型連休であり、大型連休中はもちろん航空券も高騰します。
当然のことながら春節の前後10日間ほどは私たちにとってインバウンド強化期間と設定するべきです。
2019年中国春節インバウンド強化期間の設定は1月中旬から2月中旬
春節を含む2018年1月から3月の訪日中国人全体の消費額は約4,391億円にものぼります。同じ春節を祝う地域でも、台湾の1,495億円、香港の819億円より、倍以上消費している結果です。
来日する中国人の多くは富裕層。また、来日者数も台湾の約113万人や香港の約53万に対して、中国は約194万人と数が多いです。そのため、消費額も訪日客の中で最高額を記録しているようです。
では、この大きな商機である春節にあたり、商業施設として具体的にどのようなインバウンド対策が効果的か、以下の3点に分けて解説します。
1、来店動機を作る(なぜ訪れるのか?)
2、情報発信タイミングを理解する(いつ情報発信するのか?)
3、中国人観光客とのコミュニケーションを考える(どのようにして情報発信するのか?)
1、来店動機を作る(なぜ訪れるのか?)
特に商業施設や小売店の業態として考えないといけないのは、来店動機を作ることです。
これを蔑ろにしては訪日中国人観光客は訪れません。仮に訪れたとしても物見客、ウィンドウショッピングで終わり、購買までにはつながりません。首都圏や大阪繁華街の観光客が多い地域に施設や店舗を構えていても同じです。中国人観光客がわざわざ「なぜここへ訪れるのか「「何のために訪れるのか」を考え、訪れる動機作りが必要になります。
様々なブランドやテナントが入り、飲食店や飲食スペースが整っている商業施設では忘れがちかもしれませんが、これが最も重要であると考えます。
簡単にいうと以下の点、どれか一つでも当てはまっているかチェックして見ましょう。
□お目当のブランドや買いたい商品が揃っているか?
□特別なセールやキャンペーンが開催されているか?
□お得なセット商品や福袋の販売を計画しているか?
□見てみたいと思われる場所や商品があるのか?
□特別な体験ができるイベントが開催されているのか?
□人気の飲食店、写真映えするメニューが入っているか?
弊社が提案している来店動機作りは上記のいずれかであり、具体的にご紹介していきます。
①そのお店でしか買えないセット商品や福袋を用意
中国でも日本の福袋文化は浸透しており、毎年日本の福袋を楽しみにしている中国人は少なくありません
また、商業施設は各テナントさんのブランド力や商品力に集客が左右されがちですが、各テナントさんと協力し、人気商品や売れ筋商品をセットとして販売することも可能です。
②中国人観光客向けにセールやキャンペーンを実施
せっかくの旧正月でショッピングを楽しむためには、その商業施設が他店と違うキャンペーンを実施していれば、そこに訪れ、ショッピングしたいと思うのは我々日本人も同じです。
ましてや賑やかな雰囲気を好む中国人観光客は、正月気分で財布の紐が緩んでいるかもしれませんのでセールや割引キャンペーンは効果的です。
③人気商品や売り切れ商品を数量限定で用意
中国ではすでに越境ECの環境は整っており、中国現地にいながらも日本の商品をストレスなく購入できます。もちろん日本で買うよりも割高であり、売り切れ商品も数多くあります。
今回の春節期間中に日本を訪れ、実際に店舗スタッフからの情報も仕入れ、購入しようと考えている人は数多く存在します。また。その商品の在庫状況も様々な方法でリサーチしてきているので、数量限定をフックに来店を促すことも検討してみてもいいかもしれません。
④春節限定の紙袋と非売品のノベルティグッズで中国人の心を掴む
余裕があれば是非実施して欲しいのは春節限定の紙袋。中国では旧正月である春節前後には縁起物の赤い紙袋をぶら下げる人をよく見かけます。日本企業からするとあまりピンと来ないかもしれませんが、そういった心配りをすることも大切ではないでしょうか。
2、情報発信タイミングを理解する(いつ情報発信するのか?)
前述したようなフック商品やキャンペーンをどのタイミングで告知するかということが重要です。
皆さんもご存知の通り、訪日観光客へ情報を届けるには旅マエ、旅ナカ、旅アトの3フェーズに分けて考えることが必要です。
旅マエとは
インバウンドマーケティングにおいては、訪日外国人観光客の 訪日旅行前のおおまかな訪問地を選んだり、宿泊先を探したり、訪問地での観光名所やショッピングスポットを検索したりしている段階 のことを指します。期間としては訪日旅行の 1〜3ヶ月前です。
旅ナカとは
旅ナカとは、訪日外国人観光客の訪日旅行中の、 観光地をめぐり、ショッピングを楽しみ、ホテルや旅館などの宿泊施設に泊まるなどして旅行を満喫している段階 のことを指します。期間としては訪日旅行中の4〜8日間程度です。
旅アトとは
旅アトとは、母国に帰国し、 訪日旅行の余韻にひたる期間です。お土産を配ったり、旅行の様子や感想をまとめてSNSなどに投稿したりする段階です。期間としてはおおよそ訪日旅行後 1ヶ月間程度になります。
インバウンドマーケティングにおいて、旅マエ・旅ナカ・旅アトという3つのフェーズにわけるのは、それぞれのフェーズごとによって 訪日外国人観光客の行動が異なり、適切なプロモーションのアプローチが異なるためです。
旅マエ・旅ナカ・旅アトプロモーションの最近の流れ
近年の訪日中国人観光客の旅マエ・旅ナカでの行動の変化に伴い、各フェーズの重要度に変化が起きています。
従来、訪日中国人観光客は団体旅行での訪日がほとんどでした。団体旅行では、ツアー会社によってスケジュールが決められており、ゆっくりショッピングを楽しむ時間や、自由時間に制限がありました。そのため、限られた自由な時間で超効率的に買い物をしていくために、旅マエの段階で入念な調査、買い物リストの作成をしていました。
このような背景があったため、旅マエの準備・調査段階でいかに訪日外国人観光客に認知してもらうか、買い物リストに入るかが重要課題とされていました。
しかし、最近ではFIT(個人旅行)の比率が上がってきて自由な時間が増えたこともあり、日本の現地に着いてから調べたり悩んだりすることができるようになりました。
日本の情報をスマホで調べられる訪日情報サービスの続出、リピーター化の重要性向上に伴う満足度向上施策の重要性の高まりといった要素により、旅ナカでのプロモーション施策が重要視されるようになってきています。
また、越境ECの登場や、リピーター化の重要性向上などがあり、従来情報の分析に終止していた旅アト施策において、そのプロモーション施策にも変化が生じてきています。
中国人観光客の購買行動の変化について
中国人の観光客が団体ツアーから個人旅行へと移行している傾向は、統計上にも表れています。消費行動にも変化が生じており、これまで“爆買い”という言葉が象徴していたような家電やブランド品、お菓子などから、アパレルや化粧品へとシフトしています。中国人の消費動向からは、旅行回数を重ねれば重ねるほど、アパレルや化粧品など個人の嗜好やテイストが入る買い物が増える傾向が見られます。
購買スタイル
これまで→団体旅行で訪れ、短時間で効率よく商品を買い終える。
これから→個人旅行で訪れ、買い物行為自体を楽しむ。
計画購買
これまで→マスト・バイ・リストに掲載された人気の商品をまとめ買い。
これから→大体の目星をつけておき、商品の説明を受けて、自分に合った商品を厳選して購入。
非計画購買
これまで→隣の人が買っているものを追加購入。
これから→日本でしか売っていないもの、自分の生活スタイルに適した商品を検索して購入。
自分買い
これまで→他人に頼まれた物を買うのが優先、自分のものは後回し。
これから→自分のものが最優先。余力で他人へお土産を購入。
他人買い(お土産)
これまで→初訪日。訪日は貴重でステータス。周囲から買ってきて欲しいものを募る。
これから→リピート訪日。訪日旅行は日常。周囲の人には話題性があってリーズナブルなものをバラまく。
口コミ内容
これまで→買った商品をSNSにアップ。母国より安く買えたことを自慢する。
これから→物体験をSNSにアップ。実際に悩みが解決された喜びをSNSに投稿。
このような購買行動の変化に伴い、旅マエ・旅ナカ・旅アトのプロモーションも変化させる必要があります。
3、中国人観光客とのコミュニケーションを考える(どのようにして情報発信するのか?)
弊社が実際に商業施設様にご提案、実施させていただいているプロモーション例をご紹介します。
旅マエのプロモーション例:
①中国語インバウンド用サイト
商品やイベント情報を掲載するキャンペーンHPを作成し、オリジナル福袋やセット商品の情報を露出させます。
②WeChat公式アカウント
WeChat公式アカウント内で月4回配信します。
「旅マエ」だけでなく、「旅アト」客(潜在的ファン)を増やすことも狙っていきます。
③WEIBO公式アカウント
「旅マエ」「旅アト」時にフォロワーへ商品やイベント情報を露出できます。
④検索結果広告
訪日を予定する中華圏ユーザーに検索結果に表示されるリスティング広告を配信します。
⑤公式WEIBO内広告
WEIBO内で実施するプレキャン&商品情報エントリーでWEIBO内広告を実施します。
⑥データ活用広告
旅行に関するアプリやサイトを使用したことのあるオーディエンスを追跡、また類似ユーザ検知技術によりハイポテンシャルなオーディエンス層を特定し広告出稿
⑦中国現地KOL活用
上海、北京在住で訪日経験があり、ファッション関心度の高いKOLをキャスティングし情報拡散を実施。
⑧空港Wi-Fiレンタル
訪日客にセグメントされたWIFIレンタル対象者へ商品情報とキャンペーン内容を露出させます。
旅ナカのプロモーション例:
①データ活用広告
特定のキーワードで検索しているユーザーにバナー広告を配信し、インバウンドサイトに誘導します。
②大衆点評
日本にいる中国人のスマホに近くの店舗リストも表示されます。
③Wi-FiレンタルユーザーのWeChatグループ
Wi-Fiレンタルユーザーを対象に、グループチャットの参加を促進。訪日「直前」と「訪日中」のユーザーに直接アプローチ可能です。
④ホテル連動施策
宿泊ホテルに備え付けられているスマホにキャンペーンを告知(街中でも告知可能)
お買い物ナカのプロモーション例:
①公式Wi-Fi接続ページの活用
施設内の無料Wi-Fi接続後、インバウンドサイトを表示させます。
②ポスター
中文のポスターを掲示。モデルにKOLや留学生を活用し、話題性と集客UPを図る。
③免税カウンターやインフォメーションセンター
免税カウンターやインフォメーションセンターにてキャンペーンのPOP設置からリンクでサイトへ誘導する。
④店内中国語アナウンス
店内アナウンスでキャンペーン紹介を中国語で実施する。
⑤中文デジタルサイネージ
中文のデジタルサイネージでキャンペーンと商品紹介をする。
⑥AlipayやWeChatPay決済
中国では、屋台やタクシーでもアリペイやウィーチャットが利用でき、急速に普及しています。モバイル決済のインフラを整えることは必須です。
旅アトのプロモーション例:
旅アトに効果的な施策としてはWEIBO/WeChat公式アカウントであり、訪日時、お買い物中にフォローしてもらったお客さんへ次回訪日時に有益な情報発信、拡散性のある施策実施が可能です。
FIT客が増加傾向にある商業施設と相性の良いのは中国SNSであり、公式アカウントを開設することでファン獲得と潜在的顧客へ情報発信することが可能です。
商業施設でショッピングや食事を楽しむ中国人観光客に、いかに自社公式アカウントをフォローしてもらうか、いくつかコツやポイントはありますが、自社で購買経験のある中国人観光客フォロワーを掴むことは非常に重要です。
実際に購入経験のある顧客へ定期的に情報やブランド認知をしていくことで次回来店を促すことも可能となり、またフォロワーである購買経験者の周囲の訪日前観光客へ情報を届けることも可能になります。
公式アカウント運用のポイント
まずは経験豊富な中国人ライターを起用することであり、中国人独自の目線で記事広告を執筆することが重要です。いかに広告と思わせない広告を制作するか。良い意味で広告として認識させないクリエイティブを作れるかがポイントになります。公式アカウントのタイムライン上の訴求からWeChatの記事コンテンツへ流入させ、深い理解と露出拡大を促進することに注意しましょう。
実際に日本で生活している中国人ライターも多数存在します。彼ら彼女たちの視点は中国人消費者視点であり、日常の中で日本のトレンドも日本人と同じように把握しています。
私たちが知らない情報を入手していたり、驚くような視点で日本の日常を紹介したり、中国人ならではの情報発信が日常的に行われています。
新しくオープンしたおしゃれなカフェ、フォトジェニックなスポット、商業施設や特定の人気ブランドのセール情報や新商品情報は、日本に住んでいるライターや中国人留学生にとって当たり前のように入手可能であり、その情報を母国に住む訪日前中国人より早く入手することが可能な環境にいます。
また弊社サービスである「留学生VOICE」に登録している留学生や元留学生はトレンドに敏感であり、個人のSNSで毎日のように日本の生活やショッピングの様子を母国の友人へ発進し続けています。
弊社クライアントで、ある商業施設のインバウンドサポートチームも全員日本に住んでいる留学生か留学経験者であり、彼ら彼女たちの発進する内容は母国の訪日前中国人にとって非常に好評のようです。
中国大陸ではネット規制の環境があり、InstagramやFacebookは閲覧できなくなっておりますが、日本に友人がいる訪日前中国人や訪日経験者はそのネット規制をくぐり抜けて留学生の投稿をチェックしているという話も事実として存在します。
インバウンド対策と言っても、結局のところ訪日前中国人とどのようにしてコミュニケーションを設計していくかであり、ネットでも口コミでもその手法や情報源を、誰と、どのタイミングで、どの場所で結ばれているかを考え理解する必要があります。
商業施設のインバウンド対策として春節に向けて取り組めることはまだまだたくさんあると思いますが、今回は実際に弊社がお手伝いしている一例をご紹介しました。
弊社ではトレンドに敏感な留学生と一緒に企業のインバウンド施策をお手伝いしております。
・留学生100人アンケートでインバウンドリサーチ
・インバウンド商品開発のためのグループディスカッション
・留学生インバウンドチームが飲食店へ体験訪問、レビュー投稿とインバウンド対策案を提案
・在日中国人インフルエンサーや現役モデルのコスメ体験、SNSでの情報拡散
・中国人高度人材による専門文書から飲食店メニューまでの翻訳業務
・中国人クリエイターやカメラマンの中国人視点でのクリエイティブ製作
在日外国人や留学生を起用したインバウンド対策やプロモーション施策をご検討されている企業様、是非一度お問い合わせくださいませ。